今週は、商品を増やす話より、いまある商品を誰にどこで渡すかという話が並びました。ダイドーリミテッドは23億円でプロテインECを買い、アパレル顧客との掛け合わせを狙うと明言しました。再春館製薬所は他社が作る犬猫用サプリを自社の通販に載せ、TRIIIは2品のままモールを1つ増やしました。Linonは銭湯を2週間借りて、成分ではなく使う場面のほうを作っています。一方、消費者は商品価格ではなく送料込みの合計で比べ始めました。値段で並べられる前に、誰に・どこで・どんな場面で渡すかを決めた側が強い週です。今週は5本です。
健康食品
ダイドーリミテッド、プロテインECを23億円で買収。「顧客LTVの最大化にも寄与」
アパレルブランド「ニューヨーカー」などを展開するダイドーリミテッドが7月23日、プロテインブランド「VERIFYST(ベリフィスト)」を展開する4STRENGX(フォーストレングス)の全株式を取得すると発表した。取得価額は23億円で、2026年9月期の業績目標達成を条件に最大3億円の追加対価を支払う。株式譲渡は8月31日に実行する予定。4STRENGXは3キログラムの大容量プロテインを中心にアマゾンで販売数を伸ばし、高品質原料と手頃な価格を両立した商品設計が支持されて、売上高は2024年9月期の約8800万円から2025年9月期には13億6100万円に成長した。2026年9月期は前年同期比1.5〜1.9倍の増収、営業利益は同2.7〜3倍を見込む。山田政弘CEOは国内プロテイン市場が年率8.4%で拡大し、2025年の市場規模が1300億円に達する見通しだとしたうえで、アパレル・テキスタイル・不動産賃貸に続く事業の柱としてウェルネス・ビューティー領域に進出すると述べた。出典:日本ネット経済新聞(7.30・要無料登録)
アパレルとウェルネスを組み合わせることで”体の内と外”の両面から価値提供が可能となり、顧客LTVの最大化にも寄与する— 日本ネット経済新聞(ダイドーリミテッド 山田政弘CEO)
山口の視点クリームチームマーケティング代表
1年で8800万円が13億6100万円、15倍以上です。ただ買った側が語ったのは売上規模ではなく、アマゾンでの販売ノウハウと、自社のアパレル顧客と掛け合わせたときのLTVでした。単品で伸びた健康食品ブランドの値段が、いくら売ったかより「誰にもう1本売れるか」で決まりはじめている、と読めます。自社に当てるなら、主力1本で伸びている会社ほど、2本目を自分で開発するか、他社の商品を仕入れて自社の顧客に載せるかを並べて比べる価値があります。今週できるのは、定期を1本しか持っていない顧客が全体の何%かを数えること。この比率が大きいほど、外から商品を持ってくる余地が残っています。
ポイント:単品ブランドの評価は売上規模より「誰にもう1本売れるか」で決まりはじめている。定期を1本しか持たない顧客の比率を数える。
化粧品
ヘアケア「TRIII」、アマゾン一本足からQoo10へ。2品でモールを増やす
ヘアケアブランド「TRIII(トリー)」を展開するトリーがこのほど、Qoo10に出店した。これまでアマゾンを中心に販売してきたが、美容カテゴリーに強みを持つQoo10へ出店し、美容感度の高いユーザー層との接点拡大を図る。今年3月には、アマゾンで発売から2週間で累計2000本を販売したという。同ブランドは「サロンクオリティをセルフケアで」をコンセプトに掲げ、独自の補修成分「トステア」を配合した洗い流さないヘアオイルとヘアミルクの2商品を展開している。出典:日本ネット経済新聞(7.31・要無料登録)
これまでアマゾンを中心に販売してきたが、美容カテゴリーに強みを持つQoo10へ出店し、美容感度の高いユーザー層との接点拡大を図る。— 日本ネット経済新聞
山口の視点クリームチームマーケティング代表
商品はヘアオイルとヘアミルクの2品だけです。品数を増やす前に売り場を増やしている。順番として理にかなっています。アマゾンは買う目的が決まっている人が来る場所で、Qoo10は美容カテゴリを見て回る人が来る場所です。同じ商品でも、探されて買われるのか、見つけられて買われるのかで、必要な見せ方が変わります。今週できるのは、主力商品の商品ページを、指名で来た人向けの文言と、初めて見た人向けの文言に分けて書いてみること。2品しかないなら、書き分けは半日で終わります。1つのモールに売上が寄っている会社ほど、規約変更や検索順位の1回の変動で数字が動きます。
ポイント:品数を増やす前に売り場を増やす順番。指名で来る人と回遊で見つける人とで商品ページの書き分けを試す。
健康食品
再春館製薬所、他社が作る犬猫用サプリを自社の通販チャネルで販売へ
再春館製薬所が7月28日、犬猫生活が製造する犬猫用サプリメント「エイジングケアピューレ」について、7月27日付で同社を販売店とする販売店取引基本契約を締結したと発表した。今秋10月1日から再春館製薬所の通信販売チャネルでの販売を開始する。両社は2024年2月に同商品を共同開発して発売しており、再春館製薬所は2024年から原料選定および製品監修として携わってきた。発売から約2年半が経過し、より多くの家族に向けて届けたいという共通の願いから、再春館製薬所での自社販売開始に至ったとしている。あわせて7月23日から8月5日まで、同社の生体リズムケアブランド「ポジティブリズム」と犬猫生活によるSNSコラボキャンペーン「#私とこの子のポジティブリズム」を実施している。内容量は5グラム×30本。価格などの詳細は10月の販売開始に合わせて公式サイトで案内する。出典:健康美容EXPO ニュース(7.28・無料)/再春館製薬所 リリース(7.28・無料)
「ドモホルンリンクル」や「ポジティブリズム」で培った知見を「ペット領域」にも応用し、2024年から原料選定および製品監修として携わってきました。そして今回、再春館製薬所の通信販売チャネルを通じてお客様へお届けする「直接販売」を開始する— 再春館製薬所 リリース
山口の視点クリームチームマーケティング代表
自社で作らず、他社の商品を自社の通販に載せる形です。しかも共同開発と監修という関わりを2年半持ってから販売店になっている。化粧品の会社が犬猫用サプリを扱うのは飛躍に見えますが、届け先は同じ既存顧客で、買う動機も年齢による変化のケアで揃っています。品揃えを広げるとき、探すべきは成分や製法が近い商品ではなく、同じ顧客が同じ理由で買う商品だという順番です。今週できるのは、主力商品の購入者が他に何を買っているかを、同梱アンケートかLINEの1問で聞くこと。2本目の候補はそこに出ます。なおペット用の商品は人向けの機能性表示食品制度の対象外で、表示は景品表示法とペットフード安全法の側で見ます。
ポイント:品揃えは成分の近さではなく、同じ顧客が同じ理由で買うかで広げる。購入者が他に何を買っているかを1問で聞く。
化粧品
ヘアケア「Linon」、東中野の銭湯を2週間まるごと借りて使用体験をつくる
SOLIAが7月30日、ヘアケアブランド「Linon(リノン)」で、東中野の人気銭湯「松本湯」とのコラボレーションイベント「Linon × 松本湯」を2026年8月6日から19日まで開催すると発表した。初日はメディア関係者のみを招く「メディアデー」とする。来場者は松本湯の浴室でLinonのシャンプーやトリートメントを実際に使用でき、脱衣所ではロックオイルやヘアミルクなどのアウトバス商材をタッチアップ体験できる。休憩スペースにはブランドブース展示、ガチャガチャ、撮影スポットを設置。のれん、外壁バナー、ポスターで銭湯全体をLinon仕様にする。イベントコンセプトは「お風呂が、自分をアップデートする時間になる」で、ブランドアンバサダー「ME:I」とのタイアップ楽曲「Update ME」と世界観をそろえた。松本湯は1936年創業。2021年に実施したクラウドファンディングで目標金額を開始から1日足らずで達成した実績を持つ。出典:日本ネット経済新聞(7.31・要無料登録)
来場者は、松本湯の浴室でLinonのシャンプーやトリートメントが実際に使用できる。また、脱衣所ではロックオイル、ヘアミルクなどのアウトバス商材もタッチアップ体験できるようにしている。— 日本ネット経済新聞
山口の視点クリームチームマーケティング代表
ヘアケアは成分で差をつけようとすると薬機法で行き止まりになります。ここでやっているのは、商品の説明を増やすことではなく、使う場面ごと用意してしまうこと。浴室で洗い、脱衣所でアウトバスを付けるという実際の使用順が、そのまま導線になっています。しかも2週間、1店舗に絞っている。街頭で広く配るサンプリングより、1回使い切りに近い体験のほうが記憶に残るという判断です。今週できるのは、自社商品を「いつ・どこで使うか」を1行で書き出し、その場所を持っている事業者が商圏内にいないか探すこと。銭湯、サウナ、ジム、美容室、ホテル。かかるのは場所代と什器で、広告費を丸ごと積む話ではありません。
ポイント:成分ではなく使用シーンで差をつける形。自社商品の「いつ・どこで使うか」を1行にし、その場所を持つ事業者を商圏内で探す。
化粧品
比べる単位が「送料込みの合計」へ。物価高で重視する点の1位に
システムリサーチが運営する「創作品モールあるる」が7月31日、ネット通販の購入頻度に関するアンケート結果を発表した。調査は7月27日、25〜59歳の男女300人にインターネット上で実施。過去1〜2年で物価高騰を実感していると答えたのは「とても実感している」72.0%、「やや実感している」22.0%の合計94.0%。購入頻度は1〜2年前と比べて「ほとんど変わらない」が59.0%で、「少し増えた」16.0%と「明らかに増えた」8.7%を合わせると4人に1人が増加した。増加した最大の理由は「店舗より安い商品を探すようになったため」が47.3%で最多、次いで「ポイントやクーポンを活用できるため」が37.8%。減った理由は「家計全体の支出を抑えるため」「送料を含めると割高に感じるため」「必要性の低い商品を買わなくなったため」の順。物価高騰で以前より重視するようになった点は「送料を含めた合計金額」が最も多く、「商品価格の安さ」「ポイントやクーポンのお得さ」が続いた。出典:通販通信ECMO(7.31・要無料登録)
物価高騰によってネット通販で商品を選ぶ際に、以前よりも重視するようになった点として、「送料を含めた合計金額」が最も多かった。— 通販通信ECMO
山口の視点クリームチームマーケティング代表
300人の調査なので、傾向として読む数字です。押さえるのは、比べる単位が商品価格から送料込みの合計に移っていること。化粧品や健康食品の単品通販は本体価格を据え置いて送料を別に取る設計が多く、合計額が出るのはカートに入れたあとです。ここで落ちていないかは今週すぐ確認できます。カート到達から購入完了までの離脱率を、送料無料ラインの上と下で分けて見る。下が明らかに悪ければ、ラインの位置か本体価格のどちらかが合っていません。なお、送料相当分を本体価格に乗せたうえで「送料無料」と強調する見せ方は、前号で取り上げた東京都の指導事例に挙がっています。動かすなら両方まとめて見直すのが安全です。
ポイント:比較の単位が本体価格から送料込みの合計へ。カート離脱率を送料無料ラインの上下で分けて見る。上乗せ型の送料無料は指導事例。